藤本賞
故・藤本真澄は生涯に渡って269本の映画を製作し、「社長」シリーズ、「若大将」シリーズなどの娯楽性に溢れた映画を製作する一方、成瀬巳喜男監督と組んだ文芸映画など、幅広いジャンルの映画を世に送り出し、永年日本映画の製作に対して多大なる貢献、実績を残した。
その藤本氏の業績を記念するとともに、故人の念願であった日本映画産業の向上発展の一助となすべく、毎年、全国の劇場公開用として製作、一般に公開された映画の中で、特に観客の多大な支援を受け、優れたエンターテイメント性を持った映画の製作者を中心に表彰するものである。
第42回(2022年度) | ![]() 前列左より 下田氏、平野氏、松井氏、梶本氏、柴田氏、髙野氏 後列左より 宮川氏、深瀬氏、武井氏、備前島氏 |
藤本賞 | 松井俊之 「THE FIRST SLAM DUNK」の製作に対し |
授賞理由
世界的に絶大な人気を誇る原作コミックの映画化において原作者を監督に起用し、大胆な設定変更やモーションキャプチャーを活用した、先進的な映像や音楽との総合効果で一級のエンターテインメント作品へと昇華させた。原作ファンのみならず幅広い世代の心を掴み、圧倒的な興行成績を上げるとともに、スクリーンで観てこその感動を再認識させる映画を製作した功績に対して。 |
藤本賞・特別賞 | 尾田栄一郎 梶本圭 柴田宏明 髙野健 「ONE PIECE FILM RED」の製作に対し |
授賞理由
全世界累計発行部数5億冊に迫る有名原作と劇場映画の集大成として、原作者を総合プロデューサーに加え、ライブコンサートと斬新な活劇ストーリーの融合への挑戦を果たし今までにない「ONE PIECE」の世界を作り上げた。
コロナ禍の観客の飢餓感に応え日本中を席巻する社会現象を巻き起こし、過去のシリーズを飛躍的に上回る興行成績の作品を製作した功績に対して。 |
藤本賞・奨励賞 | 平野隆 下田淳行 「ラーゲリより愛を込めて」の製作に対し |
授賞理由
閉塞感や生きづらさが蔓延する中、「今まさに語るべき」希望を与える渾身の作品を生み出した。
シベリア抑留の中で人生の終焉を迎えた名もないひとりの男の実話に基づき、戦争スペクタクル表現を一切使わず「平和とは何か」という全人類の永遠のテーマを静かに温かく伝え、幅広い観客を獲得した作品を製作した功績に対して。 |
藤本賞・新人賞 | 武井克弘 備前島幹人 「BLUE GIANT」の製作に対し |
授賞理由
原作では音が表現できなかった「ジャズ」を「アニメーション」で観せるという挑戦に加え、友情と挫折と成功の物語にジャズセッションを組み合わせ、大胆な構成のエンターテインメント作品を生み出した。
一流プレーヤーの演奏するサウンドに相応しい新映像表現に果敢に挑戦し、幅広い観客の支持を得てアニメーション映画の可能性を大きく広げる作品を製作した功績に対して。 |
藤本賞・新人賞 | 深瀬和美 「死刑にいたる病」の製作に対し |
授賞理由
ミステリー作家・櫛木理宇の原作をもとに、快楽大量殺人事件で収監中の犯人と、主人公との心理戦の応酬から目が離せない挑戦的なエンターテインメント映画を誕生させた。独特の映像美術を駆使した演出により、猟奇的キャラクターや異質の映像空間を出現させ、サスペンス映画の新境地ともいうべき作品を製作した功績に対して。 |
藤本賞・新人賞 | 宮川朋之 「仕掛人・藤枝梅安」の製作に対し |
授賞理由
池波正太郎生誕100周年記念作品として、日本人の誇りでもある格調高い王道の時代劇の枠組みを守りつつも、現代の斬新なVFX技術を取り入れた革新的な時代劇として成功させた。主人公・梅安をはじめすべての登場人物が陰影に富み、彫りの深い人物として作品に深みと奥行きを与え魅力に溢れた新時代劇を製作した功績に対して。 |
藤本賞選考委員会 ● 委員長 中川 敬 ● 委員 襟川クロ/樋口尚文/品田英雄/金澤 誠/市川 南(敬称略)